ほうろう
放浪

冒頭文

一 身に覚えないとは言わさぬ、言うならば言うてみよ、大阪は二ツ井戸「まからんや」呉服店の番頭は現糞(げんくそ)のわるい男、言うちゃわるいが人殺しであると、在所のお婆は順平にいいきかせた。 ——「まからんや」は月に二度、疵ものやしみつきや、それから何じゃかや一杯呉服物を一反風呂敷にいれ、南海電車に乗り、岸和田で降りて二里の道あるいて六貫村へ着物売りに来ると、きまって現糞わるく雨が

文字遣い

新字新仮名

初出

「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月

底本

  • 俗臭 織田作之助[初出]作品集
  • インパクト出版会
  • 2011(平成23)年5月20日