まいひめ
舞姫

冒頭文

鴎外漁史の「舞姫」が国民之友新年附録中に就(つい)て第一の傑作たるは世人の許す所なり。之(これ)が賛評をなしたるもの少しとせず。然(しか)れども未(いま)だ其(その)瑕瑾(かきん)を発(あば)きたるものは之れ無きが如(ごと)し。予は二三不審の廉(かど)を挙(あ)げて著者其人に質問せんと欲す。 「舞姫」の意匠は恋愛と功名と両立せざる人生の境遇にして、此(この)境遇に処せしむるに小心なる臆病なる

文字遣い

新字旧仮名

初出

「國民之友」1890(明治23)年1月

底本

  • 現代日本文學大系 96 文藝評論集
  • 筑摩書房
  • 1973(昭和48)年7月10日