しょもつをあいするみち
書物を愛する道

冒頭文

岩波文庫をはじめ、今日弘く行われて居る数々の「文庫もの」に対して、我々古い人間の包みきれない不満は、あまりにも外国の著作が多過ぎるという一点である。西洋は国の境がもとはそうはっきりとして居らず、学者も書物もよく旅行をして居て、最初から国際共有のものが多かったが、それでさえ文庫の目録には国々各自の片よりがある。タウフニッツのような特殊の目的をもって、原文のまま出して居るものは別として、私たちの見て居

文字遣い

新字新仮名

初出

「書物新潮」1940(昭和15)年4月

底本

  • 世界教養全集 別巻1
  • 平凡社
  • 1962(昭和37)年11月20日