れきしのむじゅんせい
歴史の矛盾性

冒頭文

歴史の領域は過去にある。これは何人にも異論のないことであろう。しかし、過去は過去として初から固定しているものではなく、断えず未来に向って推移してゆく現在の一線を越えることによって、未来が断えず過去に化し去るのである。これもまた明白なことである。ただ歴史の取扱う過去は、単なる時間としての過去ではなくして、過去となった人の生活である。ところが、生活は未来に向って進んでゆくのがその本質である。断えず未来

文字遣い

新字新仮名

初出

「史苑 二ノ一」1929(昭和4)年4月

底本

  • 津田左右吉歴史論集
  • 岩波書店
  • 2006(平成18)年8月17日