しろんのりゅうこう
史論の流行

冒頭文

奇なるかな世潮の変遷、試(こころみ)に最近数年間の文学界を回顧せば年ごとに流行の一新するあるを見る。二十二年は小説流行のときにして二十三年は和文、漢文の流行は二十四年に始まりてしかして二十五年は史論の盛行を見るにあらずや。もとよりその間に密確なる区劃をなさんは無稽の業に属すといへども大体の状態は概(おおむ)ね此(かく)の如(ごと)きか。これそもそも人心の奇を好むによるか将(は)たその間必然の理勢あ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「青年文学 一三」1892(明治25)年11月

底本

  • 津田左右吉歴史論集
  • 岩波書店
  • 2006(平成18)年8月17日