げいじゅつとこくみんせい
芸術と国民性

冒頭文

芸術史家、または芸術の批評家が或る個人の作品を観てそこにその作家の属している国民全体の趣味なりまたは物の見かたなり現わし方なりの或る傾向が見えるというのは尤(もっとも)な話である。しかし芸術家が製作をするに当って「おれは日本人だから日本人の趣味を現わすのだ」というようなことを意識してかかるものがあるならば、それは飛んでもない見当ちがいの話である。芸術家が製作するに臨んでは渾身ただ燃ゆるが如き製作欲

文字遣い

新字新仮名

初出

「みづゑ 一二六」1915(大正4)年8月

底本

  • 津田左右吉歴史論集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2006(平成18)年8月17日