ちょうし バイロン・ハイネ――ごくちゅうのいちだんそう―― |
長詩 バイロン・ハイネ――獄中の一断想―― |
冒頭文
その時僕は牢獄の中に坐ってゐた 格子が 僕と看守の腰のピストルとの間をへだてゝゐた 看守は わざ〳〵低くつくりつけた窓からのぞきこむために 朝々うやうやしく僕にお辞儀し 僕は まだ脱獄してゐない証拠として ちびつけのブハーリンのような不精髯の間から 朝々はったと看守をにらみつけた これが僕らの挨拶だった 朝になると、窓が右からかげって来た 夜になると、窓が左からかげって来た
文字遣い
新字旧仮名
初出
「詩人」1936(昭和11)年1月
底本
- 槇村浩詩集
- 平和資料館・草の家、飛鳥出版室
- 2003(平成15)年3月15日