いわしみず
岩清水

冒頭文

いろ青ざめて谷間をはしり、夕ぐれかけてただひとり、岩をよぢのぼれるの手は鋼鐵(はがね)なり、ときすべて液體空氣の觸覺に、山山は茜(あかね)さし、遠樹(とほき)に光る、わが偏狂の銀の魚、したたるいたみ、谷間を走りひたばしる、わが哀傷の岩清水、そのうすやみのつめたさに、やぶるるごとく齒をぬらす、やぶるるごとく齒をぬらす。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 萩原朔太郎全集 第三卷
  • 筑摩書房
  • 1977(昭和52)年5月30日