うまや

冒頭文

高原の空に風光り、 秋はやふかみて、 鑛脈のしづくのごとく、 ひねもす銀針(ぎんばり)の落つるをおぼえ、 ゆびにとげいたみ、 せちにひそかに、 いまわれの瞳の閉づるを欲す。 ここは利根川、 その氾濫(はんらん)のながめいちじるく、 青空に桑の葉光り、 さんらんとして遠き山里に愁をひたす、 あはれ、あはれ、われの故郷(ふるさと)にあなれば、 この眺望のいたましさ。 眼もはる

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 萩原朔太郎全集 第三卷
  • 筑摩書房
  • 1977(昭和52)年5月30日