へんきょう
偏狂

冒頭文

あさましき性のおとろへ、あなうらに薫風ながれ、額に緑金の蛇住めり、ああ我のみのものまにや、夏ふかみ山路をこゆる。かなしきものまにや、のぞみうしなひ、いつさいより靈智うしなひ。さびしや空はひねもす白金、はやわが手かたく合掌し、瞳(め)はめしひ、腦ずゐは山路をくだる。ああ金性の肉のおとろへ、みやま瀧ながれ、青らみいよいよおとろふ、いのれば銀の血となり、肉やぶれ谷間をはしる。金性のわがものまにや。 ——

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 萩原朔太郎全集 第三卷
  • 筑摩書房
  • 1977(昭和52)年5月30日