おさなきいもうとに
幼き妹に

冒頭文

いもうとよ、 そのいぢらしき顏をあげ。 みよ兄は手に水桃(みづもも)をささげもち、 いつさんにきみがかたへにしたひよる、 この東京の日くれどき、 兄の戀魚は青らみてゆきて、 日毎にいたみしたたり、 いまいきもたえだえ、 あい子よ、 ふたり哀しき日のしたに、 ひとしれず草木(さうもく)の種を研ぐとても、 さびしきはげに我等の素脚ならずや。 ああいとけなきおんみよ。 —一

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 萩原朔太郎全集 第三卷
  • 筑摩書房
  • 1977(昭和52)年5月30日