うきな
浮名

冒頭文

浮名(うきな)をいとはば舟(ふね)にのれ、舟はながれゆく、いま櫓櫂(ろかい)の音(おと)を絶え、風も雨も晴れしあけぼのに、よしあしぐさのみだるる渚をすぎ、舟はすいすいと流れゆくなり。ああ舟にのりて行かば、くるほしきなみの亂れもここちよく、ちのみごの夜びえする、あやしきこゑもきかであるべきに、ふるとせひとにかくれて、わがはぐくみしいろぐさのはや涸れぬとぞ、けふきけば薄葉(うすえふ)に涙しをるる、よし

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 萩原朔太郎全集 第三卷
  • 筑摩書房
  • 1977(昭和52)年5月30日