れいめいとじゅもく
黎明と樹木

冒頭文

この青くしなへる指をくみ合せ、 夜あけぬ前に祈るなる、 いのちの寂しさきはまりなく、 あたりにむらがる友を求む。 そこにふるへ、 かくれつつうかがひのぞく榎あり、 いのりつつ、一心に幹をけづりしに、 樹樹(きぎ)はつめたく去り行けり。 みなつらなめて逃れゆく、 黎明の林を出づる旅びとら、 その足竝(あしなみ)に音はなけれど、 水ながれいでて靴のかかとをうるほせり。 かくばか

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 萩原朔太郎全集 第三卷
  • 筑摩書房
  • 1977(昭和52)年5月30日