はるのきたるころ
春の来る頃

冒頭文

なじかは春の歩み遲く わが故郷(ふるさと)は消え殘る雪の光れる わが眼になじむ遠き山山 その山脈(やまなみ)もれんめんと 煙の見えざる淺間は哀し 今朝より家を逃れいで 木ぬれに石をかくして遊べる をみな來りて問ふにあらずば なんとて家路を教ふべき はやも晝餉になりぬれど ひとり木立にかくれつつ 母もにくしや 父もにくしやとこそ唄ふなる。 (滯郷哀語篇ヨリ)

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 萩原朔太郎全集 第三卷
  • 筑摩書房
  • 1977(昭和52)年5月30日