てんまんぐう
天満宮

冒頭文

一 府立病院の二等室は、其の頃疊が敷いてあつた。竹丸の母は其の二等室に入つてから、もう四ヶ月の餘にもなる。一度竹丸をよこして呉れと、度々父への便りに言つて來たけれど、父は取り合ひもしなかつた。 千代松といふ子供のやうな名を有(も)つて居る人があつた。四十二の厄年が七年前に濟んだ未(ひつじ)の八白(はつぱく)で、「あんたのお父(とつ)つあんと同い年や」と言つてゐるが、父に聞くと、

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「中央公論」1914(大正3)年9月

底本

  • 現代日本文學全集 53 齋藤緑雨 内田魯庵 木下尚江 上司小劍集
  • 筑摩書房
  • 1957(昭和32)年10月8日