てつのし
鉄の死

冒頭文

虎の子に似てゐたブルドツクの子どもは、鉄といひ、鉄ちやんと呼ばれてゐた。のそのそと物ぐささうに歩いて嬉しいときは何時も一声だけ吼えた。 鉄は、もう一頭ゐるゴリといふ土佐ブルと時々格闘をした。土佐ブルは鉄の二倍くらゐ大きさがあつて、格闘するごとに耳のつけもとを食ひ破られ、そのため耳のつけもとの毛が生えないで、つるつるにはげてゐた。負けるくせに辛抱づよく闘ふ鉄は引き分けてやつても戦ひを挑んで

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆76 犬
  • 作品社
  • 1989(平成元)年2月25日