にじゅうさんや
二十三夜

冒頭文

『エ、おい、べら棒な。恁(か)う見えても急所だぜ。問屋の菎蒻(こんにやく)ぢやあるめいし、無價(ただ)で蹈まれて間に合ふけえ』。 大泥醉(おほへべれけ)の粹背肌(いなせはだ)、弓手を拳で懷中(ふところ)に蓄へ、右手を延ばして輪を畫くと、手頸をぐいと上げて少し反身のかたち。 向合て立つたのは細目の痩形、鼻下に薄い八字を蓄へて金縁の眼鏡が光る、華奢のステツキに地を突いて、インバネスの袖を氣にし

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 萩原朔太郎全集 第三卷
  • 筑摩書房
  • 1977(昭和52)年5月30日