はなあやめ
花あやめ

冒頭文

皐月あやめさくころ。思ふどち二人三人かいつらねて、堀切の里にいきけり。「むさしや」といふ家のはなれを借りて根合せならねど、あやめの歌合といふを試みけり。 あやめは、池のこのもかのもに咲き誇れり。池には舟板橋を渡せり。人人袖ふりあひてゆきちがふ。一しきり風立ちて、えならぬ薫はおばしま近く通ひつ。 北の屋蔭の苔むしたる井筒に、新調の洋服涼しげなる若人二人、巴里形の麥藁帽子見よげにかぶりて、細き櫻の

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 萩原朔太郎全集 第三卷
  • 筑摩書房
  • 1977(昭和52)年5月30日