らんぷはくらいかあかるいか
洋灯はくらいか明るいか

冒頭文

新橋駅に降りた私はちいさな風呂敷包と、一本のさくらの洋杖(ステッキ)を持つたきりであつた。風呂敷包のなかには書きためた詩と、あたらしい原稿紙の幾帖かがあるきり、外に荷物なぞはなく、ぶらりと歩廊(プラットフォーム)に出たときに眼にはいつたものは、煤と埃でよごれた煉瓦の色だつた。そのため構内はうすぐらく、東京に着いた明るい感じなぞはしなかつた。そのころ東海道は新橋が行きとまりになり、新橋が東京の大玄関

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆73 火
  • 作品社
  • 1988(昭和63)年11月25日