ひきょう
秘境

冒頭文

漢子称して秘処といふ その崖上にたどりしに 樺柏に囲まれて はうきだけこそうち群れぬ 漢子首巾をきと結ひて 黄ばめるものは熟したり なはそを集へわれはたゞ 白きを得んと気おひ云ふ 漢子(をのこ)が黒(くろ)き双の脚 大コムパスのさまなして 草地の黄金をみだるれば 峯の火口に風鳴りぬ 漢子は蕈を山と負ひ 首巾をやゝにめぐらしつ 東に青き野をのぞみ にと笑みにつゝ先立ちぬ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第六巻
  • 筑摩書房
  • 1980(昭和55)年2月15日