となりのはな |
| 隣の花 |
冒頭文
一 郊外にある例の小住宅向き二軒長屋。形ばかりの竹垣で仕切られた各々二十坪ほどの庭——霜枯れ時の寂寥さを想はせる花壇に、春の終りゆえ、色取り〴〵の草花が咲き乱れてゐる。その庭を、朝七時、両家の主人、目木と久慈とが、何れも歯楊枝をくはへ、手拭を、一方は肩にかけ、一方は腰に下げて、ぶら〳〵歩きまはつてゐる。 目木 どうも近頃の天気予報はなか〳〵よく当りますね。久慈 まだ、これで、どう変るかわかり
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文芸倶楽部 第三十四巻第四号」1928(昭和3)年4月1日
底本
- 岸田國士全集3
- 岩波書店
- 1990(平成2)年5月8日