おとなのめとこどものめ |
| 大人の眼と子供の眼 |
冒頭文
私(わたし)の子供の頃のことであるが、往来を通る見ず知らずの馬車の上の人や車の上の人におじぎをして、先方がうっかり礼をかえすと、手をうって喜ぶいたずらがあった。日清(にっしん)戦争の頃で、かつ陸海軍の軍人の沢山住んでいた土地柄、勲章をぶらさげて意気揚々として通る将校が多かった。向こうの方から、金モールを光らせて来る姿を見ると、車の前につかつかと進んで、帽子をとったりして得意がるのであった。子供のい
文字遣い
新字新仮名
初出
「改造」1923(大正12)年
底本
- 日本児童文学名作集(下)〔全2冊〕
- 岩波文庫、岩波書店
- 1994(平成6)年3月16日