さびしきうお
寂しき魚

冒頭文

それは古い沼で、川尻(かわじり)からつづいて蒼(あお)くどんよりとしていた上に、葦(あし)やよしがところどころに暗いまでに繁(しげ)っていました。沼の水はときどき静かな波を風のまにまに湛(たた)えるほかは、しんとして、きみのわるいほど静まりきっていました。ただ、おりおり、岸の葦のしげみに川蝦(かわえび)が、その長い髭(ひげ)を水の上まで出して跳(は)ねるばかりでした。 その沼はいつごろからあっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」1920(大正9)年12月1日

底本

  • 日本児童文学名作集(下)〔全2冊〕
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1994(平成6)年3月16日