しゃりこうべ
しゃりこうべ

冒頭文

電燈の下にいつでも座っているものは誰だろう、——いつだって、どういう時だって、まじまじと瞬(またた)きもしないでそれの光を眺めているか、もしくはその光を肩から腰へかけて受けているかして、そうして何時(いつ)も眼に触れてくるものは、一(いっ)たい何処(どこ)の人間だろう、——かれはどういう時でも何か用事ありげな容子(ようす)で動いているが、しかしその用事がなくなると凝然(じっ)と座ってそして物を縫う

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1923(大正12)年6月号

底本

  • 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2008(平成20)年9月10日