まよいみち |
| 迷い路 |
冒頭文
二郎は昨夜(ゆうべ)見た夢が余り不思議なもんで、これを兄の太郎に話そうかと思っていましたが、まだいい折(おり)がありません。昼過ぎに母親は前の圃(はたけ)で妹(いもと)を相手にして話をしていたから、裏庭へ出て兄を探(たず)ねると、大きな合歓(ねむ)の木の下で、日蔭の涼しい処で黙って考え込んでいるのであります。二郎は心配そうに傍に寄り添うて、 「兄さん、何を其様(そんな)に考えているんです、何処(
文字遣い
新字新仮名
初出
「読売新聞」1906(明治39)年8月12日号
底本
- 文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船
- ちくま文庫、筑摩書房
- 2008(平成20)年8月10日