あらしのよる |
| 嵐の夜 |
冒頭文
父さんは海へ、母さんは山へ、秋日和(あきびより)の麗わしい日に働きに出掛けて、後には今年八歳になる女の子が留守居をしていました。 もとより貧しい家で、山の麓(ふもと)の小高い所に建っている一軒家で、三毛猫のまりと遊んで父さんや、母さんの帰るのを楽しみに遊んでいました。見渡す限り畑(はた)や圃(はたけ)は黄金色に色づいて、家の裏表に植(うわ)っている柿や、栗の樹の葉は黄色になって、ひらひらと秋風
文字遣い
新字新仮名
初出
「宗教界」1906(明治39)年11月号
底本
- 文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船
- ちくま文庫、筑摩書房
- 2008(平成20)年8月10日