あるふゆのばんのこと |
| ある冬の晩のこと |
冒頭文
橋(はし)のそばに、一人(ひとり)のみすぼらしいふうをした女(おんな)が、冷(つめ)たい大地(だいち)の上(うえ)へむしろを敷(し)いて、その上(うえ)にすわり、粗末(そまつ)な三味線(しゃみせん)を抱(かか)えて唄(うた)をうたっていました。 あちらにともっている街燈(がいとう)の光(ひかり)が、わずかに、寒(さむ)い風(かぜ)の吹(ふ)く中(なか)を漂(ただよ)ってきて、この髪(かみ)のほ
文字遣い
新字新仮名
初出
「婦人倶楽部」1928(昭和3)年4月
底本
- 定本小川未明童話全集 6
- 講談社
- 1977(昭和52)年4月10日