えんぽうのはは
遠方の母

冒頭文

正(しょう)ちゃんは、三つになったときに、はじめて自分(じぶん)には、お母(かあ)さんのないことを知(し)りました。それは、どんなにさびしかったでありましょう。みんなに、お母(かあ)さんがあるのに、どうして、自分(じぶん)にばかり、お母(かあ)さんがないのか? それで、正(しょう)ちゃんは、女中(じょちゅう)の脊中(せなか)におぶわれながら、「お母(かあ)ちゃん、……お母(かあ)ちゃん。」と、小(

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥 第十九卷第六號」1927(昭和2)年12月1日

底本

  • 定本小川未明童話全集 6
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年4月10日