ちちのそうしき
父の葬式

冒頭文

いよいよ明日は父の遺骨を携(たずさ)えて帰郷という段になって、私たちは服装のことでちょっと当惑を感じた。父の遺物となった紋付の夏羽織と、何平(なにひら)というのか知らないが藍縞(あいじま)の袴(はかま)もあることはあるのだが、いずれもひどく時代を喰ったものだった。弟も前年細君の父の遺物に贈られた、一族のことで同じ丸に三つ柏(がしわ)の紋のついた絽(ろ)の羽織を持っているが、それはまた丈がかなり短か

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本文学全集31 葛西善蔵・嘉村礒多集
  • 集英社
  • 1969(昭和44)年7月12日