ちちのしゅっきょう
父の出郷

冒頭文

ほんのちょっとしたことからだったが、Fを郷里の妻の許(もと)に帰してやる気になった。母や妹たちの情愛の中に一週間も遊ばしてやりたいと思ったのだ。Fをつれてきてからちょうど一年ほどになるが、この夏私の義母が死んだ時いっしょに帰って、それもほんの二三日妻の実家に泊ってきたきりだった。この夏以来私は病気と貧乏とでずいぶん惨めだった。十月いっぱい私はほとんど病床で暮した。妻の方でも、妻も長女も、ことに二女

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本文学全集31 葛西善蔵・嘉村礒多集
  • 集英社
  • 1969(昭和44)年7月12日