しじをうむ
死児を産む

冒頭文

この月の二十日前後と産婆に言われている大きな腹して、背丈がずんぐりなので醤油樽(しょうゆだる)か何かでも詰めこんでいるかのような恰好(かっこう)して、おせいは、下宿の子持の女中につれられて、三丁目附近へ産衣(うぶぎ)の小ぎれを買いに出て行った。——もう三月一日だった。二三日前に雪が降って、まだ雪解けの泥路を、女中と話しながら、高下駄でせかせかと歩いて行く彼女の足音を、自分は二階の六畳の部屋の万年床

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本文学全集31 葛西善蔵・嘉村礒多集
  • 集英社
  • 1969(昭和44)年7月12日