ぼしホームのこどもたち
母子ホームの子供たち

冒頭文

一 にぎやかな電車通の裏に、川に沿つた静かな柳の並木道があります。その最初の石橋を渡ると、すぐ前に白い三階の大きな建物が、青青とした庭木に包まれて聳(そび)えてゐます。 五年生の清三(せいざう)は、かんかんてりの真夏の西日を浴びて、元気よく学校から帰つて来て、その石の門をはいると、病院のやうな広い玄関で、同じやうに今学校からかへつたばかりの、六年生の睦子(むつこ)にあひました。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「小学五年生」小学館、1940(昭和15)年8月

底本

  • 日本児童文学大系 三〇巻
  • ほるぷ出版
  • 1978(昭和53)年11月30日