やまへかえりゆくちち
山へ帰りゆく父

冒頭文

父親(ちちおや)は、遠(とお)い街(まち)に住(す)んでいる息子(むすこ)が、どんな暮(く)らしをしているかと思(おも)いました。そして、どうか一度(ど)いってみたいものだと思(おも)っていました。 しかし、年(とし)を取(と)ると、なかなか知(し)らぬところへ出(で)かけるのはおっくうなものです。そして、自分(じぶん)の長(なが)らく住(す)んでいたところがいちばんいいのであります。 「私

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1923(大正12)年12月

底本

  • 定本小川未明童話全集 4
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年2月10日