つきとあざらし
月とあざらし

冒頭文

北方(ほっぽう)の海(うみ)は、銀色(ぎんいろ)に凍(こお)っていました。長(なが)い冬(ふゆ)の間(あいだ)、太陽(たいよう)はめったにそこへは顔(かお)を見(み)せなかったのです。なぜなら、太陽(たいよう)は、陰気(いんき)なところは、好(す)かなかったからでありました。そして、海(うみ)は、ちょうど死(し)んだ魚(うお)の目(め)のように、どんよりと曇(くも)って、毎日(まいにち)、毎日(ま

文字遣い

新字新仮名

初出

「愛の泉 8号」1925(大正14)年4月

底本

  • 定本小川未明童話全集 4
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年2月10日