うみのかなた
海のかなた

冒頭文

海(うみ)に近(ちか)く、昔(むかし)の城跡(しろあと)がありました。 波(なみ)の音(おと)は、無心(むしん)に、終日(しゅうじつ)岸(きし)の岩角(いわかど)にぶつかって、砕(くだ)けて、しぶきをあげていました。 昔(むかし)は、このあたりは、繁華(はんか)な町(まち)があって、いろいろの店(みせ)や、りっぱな建物(たてもの)がありましたのですけれど、いまは、荒(あ)れて、

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日」1924(大正13)年1月

底本

  • 定本小川未明童話全集 4
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年2月10日