したをまつるのぶん
祭舌文

冒頭文

明治十年二月十三日、濹上子斎戒沐浴シ、恭シク一壜ノ葡萄酒ト一臠ノ牛肉トヲ具ヘテ自ラ其ノ舌ヲ祭ル。其文ニ曰ク、嗚呼吾ガ心ハ謹慎ニシテ吾ガ胆ハ縮小ナリ。生来未ダ嘗テ狂暴悖戻ノ事ヲ為サズ。然ルニ汝三寸ノ贅物妄リニ喋々トシテ遂ニ意外ノ禍害ヲ招キ、吾ヲシテ飛ンダ迷惑ヲ為サシメタル。思ヒ出ダセバ去年今月今日ニシテ、即チ一周年ノ忌辰ニ当レリ。其日ノ景况ハ如何ナリシト思フゾヤ。天色惨澹トシテ朔風雪ヲ捲キ、早朝墨水

文字遣い

新字旧仮名

初出

「朝野新聞」朝野新聞社、1877(明治10)年2月13日

底本

  • 柳北全集
  • 文藝倶楽部、博文館
  • 1897(明治30)年7月9日