やこうちゅう
夜光虫

冒頭文

月なき無窮の夜空に、あまたの星がきらめいて、横たわる天の河も、ひときわさんざめいている。風は凪(な)いでいるが、海はざわめいている。見渡せば、ざあと一つまた一つ押し寄せて来る小浪(さざなみ)が、皆火のように燦(きら)めいている。黄泉(よみ)の国の美しさもこのようではなかろうかと思うばかりである。真(ほんとう)に夢のようである。小浪の浪間(なみま)は漆黒であるが、波の穂は金色(こんじき)を帯びて浮び

文字遣い

新字新仮名

初出

底本