なつのひのゆめ
夏の日の夢

冒頭文

1 その旅館は、楽園のように思えたし、女中(メイド)たちも天女のようだった。これは、明け方、条約による五開港の一つ、長崎から逃げるように帰って来たばかりだからである。というのも、「近代的(モダン)な設備」を完備したヨーロッパ式ホテルの方がよっぽど快適ではなかろうかと、当初思い込んでいたからだ。それだけに、ここでこうして、浴衣(ゆかた)を着てくつろぎ、ひんやりした座布団に座り、よろしき声の女中たち

文字遣い

新字新仮名

初出

底本