しずかなあゆみ
静かな歩み

冒頭文

1 「あすの朝迄に一人殺して下さい。いゝですか。九時に報告に来て下さい。私は今晩ここで徹夜しますから朝までずつとゐます。報酬は先に渡しておきます。」 と、札束を机の上へ投げる音がする。午後の十時である。八階二十五号室の表に佇んで聞くともなく、かうした会話を耳にした警手の西山は、ぎよッとした。この建物に警手として雇われてから、まだ一週間にもならない彼には、この二十五号室の事務所が何を商売

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 酒井嘉七探偵小説選
  • 論創社
  • 2008(平成20)年4月30日