たざんのいし
他山の石

冒頭文

濹上子晩酌シテ酔ヘリ。寝ニ就カントスルニ猶早シ、書ヲ読マントスルニ亦懶シ。客有リ来リ誘フテ曰ク、先生何ゾ市上ニ散歩セザル。乃チ共ニ門ヲ出ヅ。木葉既ニ落チ霜気稜々タリ。寒月屋瓦ヲ照シテ街灯光無シ。酔ヲ帯テ歩スル数十弓、忽チ見ル一楼上人影紙障ニ満チ履靴戸内ニ盈ツルヲ。濹上子曰ク衆何ノ為メニ来ルヤ。客曰ク是レ鶴澤氏ノ絃歌ヲ聴ク也、先生亦試ニ一聴セザルヤ。濹上子曰ク善シ乃チ入テ坐ス。楼内士女填咽、殆ド立錐

文字遣い

新字旧仮名

初出

「朝野新聞」朝野新聞社、1876(明治9)年12月17日

底本

  • 柳北全集
  • 博文館
  • 1897(明治30)年7月9日