じゅけんせいのしゅき
受験生の手記

冒頭文

一 汽笛ががらんとした構内に響き渡つた。私を乘せた列車は、まだ暗に包まれてゐる、午前三時の若松停車場を離れた。 「ぢや左樣なら。おまへも今年卒業なんだから、しつかり勉強しろよ。俺も今年こそはしつかりやるから。」 私は見送りに來てゐた窓外の弟に、感動に滿ちて云つた。襟に五年の記號のついた、中學の制服を着けて、この頃めつきり大人びた弟は、壓搾(あつさく)した元氣を底に湛へたやうな

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 学生時代
  • 新潮文庫
  • 1948(昭和23)年4月15日