しゅういちとくうきじゅうとハーモニカ
周一と空気銃とハーモニカ

冒頭文

一 周一は、今年のお年玉に叔父さんから空気銃を貰つた。去年から欲しがつてゐたものだつたが、危いから駄目だ〳〵と云はれて、父からも母からも許されなかつた。その代りクリスマスの日に母から立派なハーモニカを買つて貰つたのであつた。 周一は、ハーモニカに直ぐ飽きてしまつた。何故かなら、一月もかゝつていくら一所懸命に吹いて見ても、やさしい唱歌さへ吹けなかつたからだ。 「ねえお母さん

文字遣い

新字旧仮名

初出

「少年 第二三六号(四月号)」時事新報社、1923(大正12)年3月8日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日