おとうさんのおねぼう
お父さんのお寝坊

冒頭文

「いくら日曜の朝だからつて、もうお起ししなければいけませんわ。もう十時ぢやありませんか。美津子さん、お前お二階に行つてお父さんをお起ししていらつしやい。」 お母さんにかう云はれると、美津子は直ぐに立ちあがりました。他の用だとかう直ぐには承知しないのですが、お父さんをお起しするといふことが、大好きなのです。別に理由もないんですが、何だか自分が斯うちよつと偉くなつたやうな気がするからなのでせう。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「少女 第一二一号(新年号)」時事新報社、1922(大正11)年12月8日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日