ねむいいちにち
眠い一日

冒頭文

一 「電灯を点けて煙草を喫(ふ)かす、喫(す)ひ終ると再び灯りを消してスツポリと夜着を頭から引き被る——真暗だ。彼は、眼を視開いてゐた。……云ふまでもなく、何も考へてゐない。眠り度い! と希ふ心は、とうに麻痺してゐる。……時計の音ばかりが、イヤに勢急に響いて来る、——一寸快よいやうな気もする。——間もなく彼は、また慌てゝ灯りを点ける……。一種特別な疲れを覚えて、また指の先が煙草へ触れる……」

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京朝日新聞(夕刊) 第一三〇九三号~第一三一〇五号」東京朝日新聞発行所、1922(大正11)年11月14日~11月26日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日