しんぱいなしゃしん
心配な写真

冒頭文

「兄さんはそれで病気なの? 何だか可笑しいわ。まるで病気ぢやないやうだわね。」 「さうね、そんなのなら私達もちよつとでいゝからなつて見たいわね。」 二人の少女は、云ひ合せたやうにホヽヽヽと笑つて私を見あげました。二人とも私の従妹です。名前ですか——名前は遠慮しませう。何故なら私は、正直にこの二人の少女を描写しようと思ひますから。正直に書けば必ず怒られるに相違ありません。怒られたつて怖くもな

文字遣い

新字旧仮名

初出

「少女 第一一四号(六月号)」時事新報社、1922(大正11)年5月8日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日