みちことにちようびのあさのはなし
美智子と日曜日の朝の話

冒頭文

日曜の朝でした。——「稀(たま)にはお母様のお手伝ひをしたら、」とお母様はちよつと機嫌の悪い顔をなさいましたので、美智子は、 「だつてお母様……」と、あべこべに不機嫌な顔をして、「だつて……だつて……」と、わけのわからない弁解(いひわけ)を示して、おさげに結むだリボンを前に廻して、それをもてあそびながら、もう一遍「だつて……」と云ひました。 「そら始つた、こんな時に限つて勉強なんでせう。」

文字遣い

新字旧仮名

初出

「少女 第一〇四号(思出の巻 八月号)」時事新報社、1921(大正10)年7月8日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日