一 柳を植えた……その柳の一処(ひとところ)繁った中に、清水の湧(わ)く井戸がある。……大通り四(よ)ツ角(かど)の郵便局で、東京から組んで寄越(よこ)した若干金(なにがし)の為替(かわせ)を請取(うけと)って、三(み)ツ巻(まき)に包(くる)んで、ト先(ま)ず懐中に及ぶ。 春は過ぎても、初夏(はつなつ)の日の長い、五月中旬(なかば)、午頃(ひるごろ)の郵便局は閑(かん)なもの。受