おろかなあさのはなし
愚かな朝の話

冒頭文

窓に限られた小さな空が紺碧に澄み渡つて、——何かかう今日の一日は愉快に暮せさうな、といふやうな爽々しい気持が、室の真中に上向けに寝転むだ儘、うつとりとその空を眺めあげた私の胸にふはふはと感ぜられました。 能ふ限り、意識して——その意識がワザとらしければワザとらしい程爽快なのです——見るからに行儀悪く四肢を延して、口に一杯満した煙りを戯れ気に、が無心に、細く細く口笛を吹くやうに突らせた脣か

文字遣い

新字旧仮名

初出

「秀才文壇 第二十一巻第四号(四月号)」文光堂、1921(大正10)年4月1日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日