しょか
初夏

冒頭文

私が中学の三年の時でした。私の親友の河田が、突然自家(うち)の都合で遠方へ行かなければならなくなりました。河田とは小学校以来のたつたひとりの親友でしたから、私はその別れを何れ程悲しむだか知れませんでした。 河田と私とは学校の野球の選手でした。河田が居なくなつて仕舞つた、と思ふと、私はもう野球などやる元気はなくなつて了ひました。次の土曜日に対校仕合があるので、学校の運動場では毎日猛烈な練習

文字遣い

新字旧仮名

初出

「少年 第二〇三号(星の秘密号 七月号)」時事新報社、1920(大正9)年6月8日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日