こまどりのむね
駒鳥の胸

冒頭文

花園の春 「黄金(こがね)の羽虫、どこから来たの。蜜飲(みつのみ)の虫、あらあら、いけないわ。そんなに私の傍へ寄つてはいやよ、日向の雛鳥、あつちへお行きよ。」 レオナさんは緑石(サフアイヤ)の様に輝いた美しい瞳をうつとりとかすめて独言のやうに呟きました。 「まあ、随分酷いわレオナさん。私のことを羽虫だつて、そばへ寄つてはいけない、あつちへお行き、ですつて。いゝわいゝわ、どうせ私が

文字遣い

新字旧仮名

初出

「少女 第八十五号(新年号)」時事新報社、1919(大正8)年12月6日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日